私はこれまで、広告会社や出版社に勤務した経験があります。派遣で、コールセンターやSEのような仕事もしたことがあり、あとは、バイトで飲食関係で働いたことがあるくらいです。
広告や出版の仕事であれば、比較的リモートワークしやすいように思います。そもそも、デザイナーやライター、カメラマンなどは外部の人間を使うことも多く、制作部門の社員はディレクターや編集長、デスク、アシスタントだけでも成り立つからです。
もちろん、営業部門はリモートというわけにはいかないでしょうが、経理部やそのほかの部門もほとんどリモートで大丈夫でしょう。
さて、広告会社の制作部門におけるリモートワークを考えてみましょう。例えば紙媒体(雑誌や新聞など)の広告を制作する場合を考えることにします。
複数人のビデオ通話で、リモート会議
クライアントから、月刊誌に掲載する新たな広告の発注が入ったとします。
通常は、クライアントに出向いての打合せとなりますが、リモートワークであれば、ネット会議でクライアントの意向を聞き取り、大まかなスケジュールをすり合わせます。
この際、お互いに数人以上が参加する会議となります。最近はZOOMが注目されていますが、数十人以上の規模で接続するのでなければ、SkypeやLineのビデオ通話機能で、複数人同時でアクセスする方法があります。
PCなどの画面上に、クライアントとこちらのスタッフ全員が表示され、同時に会話できるので、打ち合わせは出来そうです。
ただし、すべての参加者が同列に配置される上に、自宅での参加となるため、クライアントとの打ち合わせ、という緊張感が保てるかどうかが肝心です。
また、打ち合わせを主導するのが、クライアントとこちら側の誰なのかを事前にはっきりさせておくことも大切です。
そう考えると、というより、当たり前のことですが、クライアントとの打ち合わせ前に、こちらのスタッフ間でビデオ通話による打ち合わせをしておく必要があります。
会社と同じソフトウエアを使って、自宅で作業
クライアントとの打ち合わせのあとは、ディレクターがクライアントの意向をもとに、全スタッフと会議を行いアイデアを出し合い、プレゼンの準備に入ります。
プレゼンの方向性が決まったら、ディレクターが3種類程度のラフ案を作成し、それをもとにデザイナーとコピーライターが、実務作業に入ります。
コピーライターの場合、エディタやワープロがあれば文書作成が行え、資料やラフ案も、AcrobatやPowerPointがあれば閲覧できるので、ほとんどコストをかけることなく自宅での作業が行えます。
デザイナーの場合は、IllustratorやPhotoshopをはじめとするソフトウエアが必要となります。
無料または低価格のソフトで、ある程度は代替できますが、やはり、しっかりとした作業を効率よく行うには、仕事で使っていたものと同じソフトウエアが必要だと思います。
しかし、会社のライセンスで個人のパソコンにインストールすることはライセンス違反になります。
しかも、こうしたソフトは、個人で購入するには、高額なものが多く、会社の経費でサポートする必要があります。
逆に、自宅での作業に使うソフトを個人で購入した場合、または既に使用していた場合、そのコストの一部、作業に使用した分を本来であれば、会社が負担する必要があります。
いずれにしても、会計上こうしたコストをうまく処理するのは難しそうです。
ソフトウエアやシステムの共有が必要
コピーライターも、デザイナーも、アシスタントを使う場合があります。
コピーライターの場合は、スペックや価格、住所など、正解がはっきりした部分を手伝ってもらい、キャッチフレーズのアイデアなどをお互いに、出し合うということが多いです。
デザイナーの場合、こちれもアイデアを出し合うこともありますが、実際のデザインを部分的に手伝ってもらう、ということが多いように思います。
会社であれば、ちょっとここ手伝って、とか、この部分だけやってみて、などということもできますが、リモートワークではそこまで細かい共同作業は難しいでしょう。
実際には、どこの部分をアシスタントに作業してもらうかを事前に指示し、クラウドなどを利用して「共同」作業することになり、アシスタントという範疇ではあるものの、痒いところに手が届く感じではないです。
もちろん、複数のプレゼン案を作る中で、いくつかをアシスタント任せ、上がってきたモノに修正をかける、というこであれば問題ありません。
コピーライターにしても、デザイナーにしても、アシスタントに指示を出しながらの作業も多く、その際はやはりビデオ通話が必須です。また、リモートビュアーを使って、作業中の文書や画像をお互いに確認しながら打ち合わせすることも大切です。
お気づきとは思いますが、アシスタントを使って、作業するのであれば、アシスタントも同じソフトウエアを使える環境が必要です。
会社のサーバーへ、安全に直接アクセスできるVPN
共有データは、クラウドで管理、というのが一般的に言われていますが、人事や経理の情報はもちろん、社外秘のデータをクラウドで共有することを認めている会社は少ないでしょう。
しかし、リモートワークを行う上で、こうしたデータを安全に社外で共有するに津用があります。データだけを安全に社外で利用できればいいのであれば、VPNを導入するのが手軽です。
ヴァーチャルプライベートネットワーク(VPN)は、ソフトウエアを導入して、ネットワークを設定るるだけで、専用回線と同等の安全を確保して、会社のサーバーなどにアクセスすることができます。
また、VCN(ヴァーチャルクラウドネットワーク)を使って、クラウドを仮想化する方法も検討してみるといいでしょう。
VNCで外部からオフィスのPCをリモート操作。
さて、データだけでなく、プログラムやシステムを共有するには、どうしたらいいでしょう。
完全に、リモートワーク化するのであれば、VPNを使って、データ処理そのものは、サーバーで行わせ、社外で利用するパソコンは単なる端末として利用させるという方法があります。
Office367やアドビのような、クラウド・ソフトを使うこともできますが、やはり機密性が気になり、躊躇している職場も多いとおもいます。
それに、会計ソフトや人事管理ソフトなど、専用ソフトを使っている場合。独自にクラウド化しなくてはなりません。
すでに、オフィスで作業している環境をそのまま安全に社外に持ち出したい、というのであれば、VNC(ヴァーチャルネットワークコンピュータ)を使うのが手軽です。
いわゆるリモートコンピュータのことで、オフィスにあるパソコンを外部から操作する技術です。
なかでも、VNCに分類させるソフトは、ソフトウエアを導入するだけの手軽さでありながら、VPN技術を含んでいるため、専用線と同等の安全性で接続できます。
この場合、オフィスで業務に利用しているパソコンを外部から、直接操作して作業ができるので、まさにリモートワークができるわけです。
ただし、遠隔操作ゆえのタイムラグが発生し、動作の鈍さも気になるかもしれません。これは、お互いのパソコンをより高速なものにすれば、ある程度は解決できます。
作業効率や作業内容によって、クラウド、クラウドソフト、VPN、VCN、VNCを組み合わせて使い分けること、そのために社内のシステムを構築し直すことが、リモートワークの普及には欠かせないと言えます。